Thirsty Thirty

生活、ときどきオタク

オーバーリング・ギフトの話

こんばんは、大の友人の結婚式に呼ばれて爆笑して帰ってきたわたしです。オタクの友人なんですけど、あちこちに爆笑ポイントが仕込まれていてまじで最高だったし『自分がもし結婚式挙げたら絶対メビレ流してやっからな…!!』と固く心に誓いました。いつになるかなんてそんなことは聞いてはいけません。

さて、そんな爆笑結婚式の数週前に『オーバーリング・ギフト』を見てきました。渋谷クロスシアター、こぢんまりしてるけど距離が近くて熱さが伝わってくるすごくいい劇場だな~と思ったし、役者さんたちも楽しそうに演じられていて面白い舞台でした。全部が全部評価できる!というわけじゃないんだけど、でもそれを補って余りある勢いがあったなあと思います。というわけで下記主観にまみれた感想です、ドンドコネタバレしておりますのでお気を付けください~!

【アスター】彼は、それまで『恵まれた』ところにいたのだと思います。自分が愛情をもらって生きてきたということを信じて疑わないから、リングを差し出してトトイを助けた。その後父親に見放されるというのはアスターの誤算だったかもしれないけれど、『人を助けるためにリングを差し出せる』ほどの愛情を受けて生きてきたのは事実なんじゃないだろうか。そして、それが当たり前だと思っていたからこそ『父親(=愛)に見放された』と感じてショックを受けたんじゃないかと思います。実際に彼の父親が欲しかったのは、作中でも彼が気付いていた通り『アスター』という人格ではなく『優秀な息子』だったのだろうけれど。わたしの目から見た彼は『向こう見ずのボンボン』という印象がどうも拭えなくて、トトイを助けるためにリングを差し出したのも、カゲツの父親のためにお金を工面すると決めたのも、理由より衝動が先んじて動いているように見えました。それがいいかどうかは別として。そして、その結果が良くも悪くもロストの世界を動かしていく。彼は、こういった話の主人公にしては珍しく絶対的な力も、強力なリーダーシップも持っていません。逆に、ずいぶん長いことロストになったことに対していじけていたり、衝動的に何度も動いたりと、なかなか共感しづらい点も描かれたんじゃないかなと思います。ただそれは、彼がずっとオーバーだったことの証なんだんだろうな。必死にならなくても生きていける、それこそ彼が持っていたリングは特別いいものだったからなおさらそれまで苦労もしていなかったんじゃないかと推測される。いい意味で『いいとこのお坊ちゃん』という感じが終始出ていて、だからこそ彼らが最後に下した『壁の外に出る』という大きな決意がより意味のあるものに見えてくる気がします。『ロストが外に出たら苦労するだろう』という未来が見えていなさそうなところも含めて、すごく一貫して作られたキャラクターなんだろうな、というのが見えました。

【トトイ】『真っすぐで素直』という点ではとてもアスターと似ていて、その発露の仕方が真逆に描かれていたキャラクターだなあと思いました。ルージュちゃんと同い年くらいなんだろうけれどトトイの方が気持ち幼く描かれていて、それがすごくいい対比になっていて。いやごめんしかしとにかく『ミゾタクかわいい……ミゾタクすごい……』という視点でしか見てなかったのでアレです、ちゃんとした感想が出てこない(最低)しかし、パンフレットにも近しいことが書いてあったけど、彼はこの作品の中で唯一『希望にあふれた』子で、ただ良くも悪くもそれが仇となっていることは否めなかったなあ、と思います。アスターともども、まっすぐが故に傷ついてしまう子。リングを売りに来たカゲツを止めるアスターの姿や言葉に傷ついたのは、自分を救ってくれたアスターが『後悔していること』を知ったからなのかなと思うし、けれどそれをアスター本人の前で出さないところにそのやさしさが見える気がします。いやしかし本当にかわいかったんだ…ぴょんぴょん跳ねたり、動きが一つ一つ軽快だったり、ミゾタクの持ち味がすごく生きている感じがしてとてもよかった…かわいかった…。

【ルージュ】誤解を恐れずに言えば、この話で一番悲しい思いをしたのはルージュなんじゃないかなと思います。元々ツンツンしている、素直になれない性格なんだろうなあというのは分かるけれど、それを少しでも変えてトトイに向き合おうとした瞬間に強制的に別れさせられてしまうという、分かりやすく悲しい目に合ってしまう女の子。少なからず『アスターさえいなければこんなことには』という思いが彼女の中にあったんじゃないかなと思うんだけど、そこから彼女がアスターに心を開こうとする瞬間はあるのだろうか…。ただ、アスターが『家族』になって、トトイの興味、視点がアスターに向いて、ある種『自分の目の届かないところに行ってしまった』からこそ自分がトトイを好きだということ、大切に思っていることに気付けたんだろうなとも思います。しかしルージュかわいかった…カカア天下というか、気の強い女の子に振り回される男の子という構図がめちゃくちゃ好きなので最高に滾りました。願わくば壁の外で新しい生活を一緒に歩み始めるトトイとルージュの話が見たかったよ……。

【カゲツ】ミロコの言ってた『トトイが赤ちゃんの時に、同い年くらいの子供をオーバーに売った』という子供がカゲツなんじゃないかなってずっと思ってるんですよね…。トトイと血がつながってるとかではなくて、ミロコが『売った』子。そして、カゲツはそれを知っていてなお自分を育ててくれた父親を助けたいと思っているんじゃないかなあ、と。そう思う理由は二つあって、ひとつはアスターに『リングを売るのはやめろ、売った金で父親が治ったとしても、リングのないお前なんてすぐに捨てられる』というアスターの言葉を頑なに聞き入れなかったこと。そんな具体的な未来の可能性を出されているにもかかわらず父親を助けたいと思っているのは、これは二つ目に繋がるんですが、『人を愛する力を持っているから』なんじゃないかなあ、と思うのです。それがどういうことかというと、物語の最後でアスターが語った『ロストの能力は、人を愛するということだ』というところに繋がるんじゃないかなと思うのです。『ロストの能力は人を愛すること』という言葉だけ聞くとあまりにも定義が広いように聞こえるんだけど、わたしは『無償の愛を注げること』だと解釈していて、それでいうとあの作品の中でそれをとてもよく体現していたのがミロコとトトイとカゲツなんじゃないかなと思って……とここまで書いて『あれ…?』となりました、あれっ…? そしてトミー、これまで見てきた役とはまた全然違う『少年』の役でめちゃくちゃよかった…!!なんやろ、あんなに素直に『迷い』の感情を出す役って大山くん(俺と世界)以来くらいで、でもまたそれとも違くて、って感じだったな~すごくよかった…。

【大人組】ひとまとめにすんなやって話なんですけどすみません!まずはミロコさん、ミロコさんのひとり両親力がすごかった……。ゆいかちゃんと12~3歳くらいしか離れてないはずなのに本当に父娘みたいですごくかわいかったしお父さん感が溢れていた。そしてトトイを亡くした後に自分が悪いと責めるアスターの頬を両手で包むミロコさんのお母さんみったらありゃしない…。あとミロコさんがトトイの亡骸をお姫様抱っこして連れて行く後ろ姿がすごく最高であった。加藤さん、めちゃくちゃいい役者さんだよなあとしみじみ思いました。まず歌がうまい。びびる。ここはディズニーかもしくは劇団四季か?帝劇か?ってなる。わたし普段ミュージカルをそんなに見るわけじゃないので詳しくはないんですが、1人だけ佇まいが明らかに違ったんですよね、発声量やビブラートの効かせ方がすごかった。そしてそれに肩を並べる百花さん……百花さん本当に歌がうまかった……(頭の悪い感想)なんやろ、事前のTwitterやインスタで見てる時は普通にスルーしてたんですけど、舞台上の衣装とあの髪型がドストライク過ぎてうわめっちゃ好き…(好き…)ってなりました。そしてトトイを亡くして、取り乱したみたいにアスターを責めようとしたルージュを抱き止めたあの姿がめちゃくちゃよかった…!!!ミロコもお母さん感があったけど、咲耶さんも『お母さん』と『大人の女性』を持ち合わせていてすごく凛としたきれいな方だなあと思いました。最高だった。だからこそイラッシュとのあれこれをもっと掘り下げてほしかったなあと残念に思います。わざと抑え目にしているのかな?というところもあるけれど、なんかな~~イラッシュが咲耶さんとどんな風に別れて、そこからどんな思いでああいう決断に至ったかをもっと細かく掘り下げてくれたらもうちょっと感情移入できたんじゃないかなとも思うなあ。

【全体として】ミロコの前でアスターが泣くシーン辺りまでものすごく良かっただけに、最後でちょっと失速してしまった感が否めないのがめちゃくちゃもったいない~!!と思ってしまいました…。アスターが言う『人を愛するのがロストに与えられた能力』っていうところがどうも唐突というか、そこを無理に定義づけしなくてもよかったんじゃないかなあと思ってしまったというか…。だとしたら咲耶さんを好きになってしまったイラッシュは?だし、父親を大切に思う(=愛する力のある)カゲツは?になってしまう気がして。もちろんその辺りの『空白』がミソなのかもしれないけれど、敢えてそこに『定義』を与えなくてもよかったのかなあ、うーーんと思ってしまったというか…。その辺り、ちょっともったいなかったかなあ。役者さんの力に助けられたところがあったのかな、と思います。これが次の話に繋がる伏線だとしたらすごいなあ、めちゃくちゃ最高だなあと思うんだけどもね!ただ、ミュージカルとしてはすごく完成度が高くて素敵だったし、当然だけど音楽も素晴らしかったし、自分が好きな小劇団ぽさもあって『熱』がすごく伝わってくる舞台だったなあと思いました。セットとか小道具も過剰に費用が掛かってる感じもしなかったし、ちゃんと『自分たちの手で作ってる舞台』というのが伝わってきてとても楽しかったです。こういうのをできる、させてもらえるのがアミューズの強みでもあるんだよなあと思いました、チャレンジさせてもらえる土壌があるのってやっぱりすごく大きいよなあ。というわけで、本当に皆様お疲れさまでした!